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2015年09月09日

黄葉が木枯らしに吹き散らされた枝に
豆粒大の蕾が寄り添って並んでいる
大寒の蒼穹が色を深める頃
小さな蝋細工のようなまろい花びらは
透明な黄色で枝を覆い尽くす
北風の緩やかな午後
時を越えてきた甘い香りが流れる
母の胎内で嗅いだのか
乳房に埋もれて嗅いだのか
記憶にない世界から漂流してきた
遥かな香り
それは胸の奥に舞い戻るように忍び込み
ひととき 我を忘れさせる
「そのままでいいのだよ・・・」
子守唄のように囁くのは風なのか
遠い遠い原風景からの声なのか
春秋を歩いてきた道に流れ来る
風に身をゆだね 目を閉じて佇むと
蝋梅の香りが体中の細胞に染み透り
身体は一瞬空中に溶けてゆく

木の花

木の花、四季、小さな生きもの、日々の詩、旅、家族という6つのテーマで綴られた43篇の詩。私に住宅設計の道を「向いているから行きなさい!」と背中を押して勧めて下さった高校時代の恩師の詩集が出版されました。蝋梅からここまで拡がる感性は、当時の子どもたちへの影響も大でした。あんなに楽しい高校生活が送れたのは、先生とこれまたユニークな感性を持ち合わせていたクラスメイトたちのおかげ。 思いやりのあるクラスメイトは宝物です。

詩がお好きな方には読んで頂きたい。
お問い合わせは鉱脈社へ!

chou23 at 13:16|この記事のURLComments(0)

2014年10月25日

『ボケママからの贈りもの』から19年

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作家で、スウェーデン福祉の研究をされている藤原瑠美さんのお話を聴きに行ってきました。
仕事を続けながらの、代わってくれる副介護者が家族の中にはいないという状況での、在宅介護の可能性を示して下さった藤原瑠美さんのご著書『ボケママからの贈りもの』との出会いは、今から19年前でした。お母様に認知症の症状がはっきりと認められた際にまず藤原さんは「在宅で介護する」という方針を建てられ、そして当時は介護保険制度もない時代でしたが、地域の繋がりの中で、試行錯誤しつつ介護を続けていらした、その体験談が、そこ彼処に温もりを感じる文章で綴られた一冊です。藤原さんの文章はとても読みやすいので、しっかりと中身が伝わってきます。みなさまもぜひ、オススメです!

それから、月日が流れ、お母様を見事に住まいで看取られ、11年に亘る在宅介護を終えられた後、藤原さんは福祉のことを学びたいと退職され、大学に入り直し、スウェーデン福祉の研究の道に進まれました。出版本も3冊増えました。
素晴らしい!続きを読む

2013年11月27日

明治神宮

明治神宮
シンポジウム「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」において陣内先生が紹介して下さっていた今泉宜子さん著『明治神宮』を読みました。
明治神宮造営が、民間有志の請願から起こり、国家プロジェクトとして成立していった経緯を「人」を通して読みやすく紹介して下さっています。
私は特に第二章の「永遠の杜」を興味深く読みました。都市の中に神宮を創設するにあたり、大きな力となったのは東京ドーム15個分の面積に相当するという神宮内苑の森、これが如何にして造林されていったか。都市東京に人工の森をつくる!
「天然更新」の力によって、人の手を借りずとも生育する森とするという、その将来性を見据えた「人」の構想の素晴らしさ。当初唱えていた自らの創設反対論を「森厳さ」という言葉の真意を捉え直すことで取り下げ、都市東京という無理なところへ人工で天然の森をつくるという挑戦を受けて立った「人びと」。
由緒ある材木問屋の子息が材木を「樹木の遺骸」と捉え嫌い、生きたままの樹木に惹かれ造園への道を進んだという紹介のくだりも興味をそそり、藪といえば藪医者、藪蛇など否定的、逆効果な表現にも用いられますが、仁徳天皇陵の「藪」から感じた「荘厳さ」を盾に、森の主な構成樹を広葉樹とすることを人に説き伏せたエピソードも見事です。

果たして現在の新国立競技場建設に携わっている「人」の志は100年後どう伝えられていくでしょう。当時の都民の無関心さや都市空間のデザイン力のなさから都市を破壊してしまったと伝えられることは一般に本意ではないと思います。槙さんの提言がなかったら、そうなっていたと考えると情けなく思います。
改めて広報を見てみると「FOR ALL」「「いちばん」をつくろう!」というコンセプトが新国立競技場建設には掲げられており、それは施設要件8万人収容という数となって跳ね返ってきていますが、数がどれだけ増えても決してALLとは成り得ず、数や規模の一番はすぐに二番三番になるものですから、コンセプトは実の伴わぬポスターデザイン上のものとなっています。
昨日、デザイン案を日本スポーツ振興センターは8万という収容人数は変えずに規模25%縮小して約22haとする方向を発表しましたが、規模、建設費等建物単体としてのみ判断するのではなく、明治神宮外苑の、すなわち明治神宮の一部としてどうあるべきかという視点で、「新しい何か」を求めるならばそれは何であるべきか、不毛なスローガンで民意を踊らさずに、建設に携わる有識者の方には真剣に取り組んで見出して頂きたいと思います。調和を維持する技術に、新しい何かを見出すことも出来るのではないでしょうか。

私個人は、8万人が同じ場所に集まるということにゾッとします。

新国立競技場

2012年07月30日

読みました。

話題の本を読みました。2006年に出版された『マグマ』です。
真山さん、数年後に3.11が起こるなんて思いも寄らなかったでしょうに。。。
取材力に支えられた無駄のないドラマ仕立てのエネルギー小説。
一冊の本が世の中を変える支えとなるかも。

既にTVドラマに仕立てられwowowで放映されているのだそうですね。
そのキャスティングにはちょっと物足りなさを感じまして(観てもいないのに)、やはり山豊さんの「不毛地帯」ばりのキャスティングが欲しいものだと、勝手に思う私です。

マグマ


2011年11月08日

祝!復刊 『日本建築辞彙』

古民家について学び始めた頃、講師を務めて下さっていた故戸張公之助さんから、推薦図書として『日本建築辞彙』と『民家のみかた調べかた』という当時既に絶版となっていた二冊を教えていただきました。

すぐに伝手を頼って当たり二冊とも古本屋さんで見つけることが出来たのですが、其々とても良いお値段だったので、より実用に役立つのは『民家のみかた調べかた』の方ではないかと判断して、『日本建築辞彙』は流してしまいました。

あれから何年経ったでしょうか・・・
あの時の一冊の価値と比べることはできませんが、学生時代辞書の扱いが超乱暴だった私にもふさわしい、真新しい一冊が今日届きました。新訂『日本建築辞彙』。

日本建築辞彙
     なんとスピンが二本も付いています。新潮文庫じゃないのに!(笑)      続きを読む

2010年07月30日

『小さいおうち』はね、

で、どうなのよ?
とお思いのあなたに(笑)。

タイトル、装丁・装本、筆・構成と「本」全体で表現しようとしている、あとがき・解説のない、しっかりと設計された住み継ぎたい家のような本です・・・なんてね。
おそらく小さなおうちの想定地はうちのご近所、目白文化村近辺ではないかな?

どんどんと文章から映像が浮かぶ筆力もさることながら、私と同年代の中島さん、どうやって時代をリサーチされたのだろう?ひとりで?それともチームが組まれて?文筆業は文系ではなく体育会系な仕事だというようなことを住井すゑさんが書いていらしたけれど、この重量挙げのようなパワーはどこからやってくるのだろう・・・
そして、向田邦子的生活表現ができるこの感覚はどこで掴んだんだろう・・・
と、中島京子さんにとっても興味が湧いてしまいました。

初々しくもある。
古い住まいを調査した時に描く思いとリンクする親しみも覚えつつ、
現在と過去を設えてのフィクションとノンフィクションの判断を誤りそうになる手法にはまりつつ、ええ、ええ、イタクラ・ショージ、検索しましたとも(笑)。

本作にて直木賞受賞とのこと。
それにしても、直木賞と芥川賞の違いは何なのかな。。。?

2010年07月29日

読みました。

小さいおうち

2010年04月19日

復活させたい暮らしのエッセンス

とーっても久しぶりに『アルバムの家』のお知らせページを開いてみたら、
カスタマーズレビューに素敵なコメントを頂いていました。
2007-02-11に投稿頂いていたのに、ちょっと気づくの遅すぎ!ですね。
出版直後はちょくちょく覗いていたのですが・・・反省。

レビュータイトルに付けてくださった『復活させたい暮らしのエッセンス』は、まさに
私たちがお届けしたかったこと。
高気密やらシックハウスやら過剰設備やら、昨今の住まいづくりは何かおかしいと感じる。それはなぜだろう?と考え始め、答えはこの辺りにあるのではないかと私たちの10才の頃の記憶を揺さぶってみたら・・・マックロクロスケのようにコロコロと出てきた当時の暮らしの思い出。クロスケたちは世の中にとっては埃の大群でも、何十年もワープした少女たちにはきらきら輝く宝石でした。その宝石は何十年経っても輝き失せない暮らしのエッセンスでもあったのです。

出版から3年半、その間に「長期優良住宅」なる制度や「家を建てる時には保険に入りなさい」と任意ではなく義務として強制的に言われてしまう制度ができました。
制度に頼らなければならない程私たちって愚かだったかしら?と『アルバムの家』を捲りながら思うのです。                              つづく

2009年02月18日

ライムポトス or ポトスライム?

私は「ライムポトス」と呼んでいましたが、「ポトスライム」とも呼ぶのですね。
ライム色のポトスということを前形容で表現するか後形容とするかの違いですが、
昨年下半期の芥川賞受賞作のタイトル『ポトスライムの舟』を活字で見て、ライムポトスなぜか「ノストラダムスの舟」のように思い、宗教絡みのストーリーなのかい?とイメージしてしまいました。
ポトスライム=ライムポトスなのですね。
『ライムポトスの舟』の方が私にはしっくりくるのですが・・・、あ、もう世に出ちゃってますものね。ハイ、すみません。
でも久しぶりに、私にも読みやすい作品が選ばれたなあという感想を持ちました。
ポトス増殖という主人公のナガセと同じことを私もやっているため妙に親近感もわきまして。でも、ポトスが食べられたら・・・なんて発想は6年程面倒を見続けてておりますが、かすりもしませんでしたよ。展開がユニークです。
賞選考委員の山田詠美さんの意見「『蟹工船』よりこっちでしょ。」に、賛成!


2009年01月29日

家族のキッチン&ダイニング

家族のキッチン&ダイニング少し前に出た本ですが、
出版社より増刷の知らせを頂きました。
ゆっくり売れ続けている様子、嬉しい限りです。

まだの方はこちらからでも、どうぞ