2017年01月14日

災害とレジリエンス

住宅医フォーラムに「災害とレジリエンス」というテーマでのパネルディスカッションに特に関心を持ち、参加i致しました。
昨年の5月、JSBCがCASBEE制度において「レジリエンス住宅チェックシート」なるものを作成していることを知ったのですが(公表は7月)、東日本大震災後、国がその様な視点を持って動き始めていることに安堵致しました。熊本での震災被害状況から耐震性の強化ばかりに建て主の注目が行き、大切な普段の生活の見直しがないがしろにされる傾向が強まることに危惧を抱いていたからです。「レジリエンス」とは外部から受ける力や影響に対する「しぶとさ、強靭さ、回復力」を意味する言葉であると制度説明の中で表記されています。趣旨は住まいのレジリエンスを高めるためには、平常時、災害発生時、災害後と其々のフェーズを想定して日常の暮らしの中で備えて行くことが大切、ということかと理解致しました。
東日本大震災で被災された方々のお話を「記憶の中の住まい」の活動の中で伺った際に、私は日々の生活の中に根付いた災害への備えが如何に大切かということを教えて頂きました。災害の歴史の中から学びとられた日常の習慣は、いざという時に命を守ります。漁師は朝、海や山、自然の様子を確認するため東西南北家四方の窓を全部開けて毎日拝む、この習慣がチリ地震の時の津波被害から地域住民の命を守ったけれど、今回は海が見えない住環境だったのでまったく気付かず行動が遅れた、津波の時にシャッターや窓を開放し津波を受け流すよう備えたのは経験知によった、日頃から津波警報が出たら何も持たずにすぐ高台にある家族の職場に集合するということを決めていたので全員無事だった、など災害をいつも意識し備えていることの重要性が感じられました。日常の備え無くハードに頼りきる方法で自然災害の危機感から解放されたいという現代人の欲望は、防潮堤を高く築城するかの如く住宅の有り様を捉えることにつながり、それは悪循環の始まりにしかならないと思います。
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表題のパネルディスカッション終了時

災害をいつも頭の片隅に置いて生活することがストレスとならないような知恵を、みんなでストックしていく、そんなムーブメントが建築界の中で起こると良いと考え参加したのですが、今回の企画趣旨は、レジリエンスという聞き慣れない用語がもうじき頻繁に使われるようになるから今のうちにチェックしておきなさい、という程度のことだったのでしょうか?パネリストのみなさん、あまり議論内容に満足しておられないような表情にも見受けられ・・・。そんな内容でした。

以下メモ的なこと
熊本のような連続する地震に対しては制振機構が有効であるとする民間のコマーシャル合戦も始まっていますが、パネルディスカッションの中で五十田教授は、一か所二か所と部分的に制震機構を取り入れても有効には機能せず、それならばむしろ耐震性を上げる方向で対処した方が良いとの意見を述べられていました。
また、熊本の工務店からは、多くの住まいで地震の恐怖を感じる中家族が集まったのは真壁造りの狭い和室であった、というお話もありました。家を支える柱という構造物が「見えている」ということがいざという時の対処につながると住み手の方が判断された、ということかもしれません。

2/6追記:
1/27に行われた京大防災研究所における戸建て制振システム振動台実験の結果報告記事が出ました。この中で、五十田教授は連続地震に対する制振システムの部分的取り入れ効果を認めていますね。制振システムの働きを除いても耐震性能3相当のモデルとありますが、制振システムの効力を判断する実験で耐震性を高く設定したのはなぜなのか。その狙いを推測できずにおります。また、制振システムを搭載していない比較モデル(耐震性能3)が二回目の加振で倒壊、という結果にも疑問が残ります。こんなに小割りな単純プランで倒壊とは・・・。

chou23 at 23:23│Comments(0)TrackBack(0)study 

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