2013年11月27日

明治神宮

明治神宮
シンポジウム「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」において陣内先生が紹介して下さっていた今泉宜子さん著『明治神宮』を読みました。
明治神宮造営が、民間有志の請願から起こり、国家プロジェクトとして成立していった経緯を「人」を通して読みやすく紹介して下さっています。
私は特に第二章の「永遠の杜」を興味深く読みました。都市の中に神宮を創設するにあたり、大きな力となったのは東京ドーム15個分の面積に相当するという神宮内苑の森、これが如何にして造林されていったか。都市東京に人工の森をつくる!
「天然更新」の力によって、人の手を借りずとも生育する森とするという、その将来性を見据えた「人」の構想の素晴らしさ。当初唱えていた自らの創設反対論を「森厳さ」という言葉の真意を捉え直すことで取り下げ、都市東京という無理なところへ人工で天然の森をつくるという挑戦を受けて立った「人びと」。
由緒ある材木問屋の子息が材木を「樹木の遺骸」と捉え嫌い、生きたままの樹木に惹かれ造園への道を進んだという紹介のくだりも興味をそそり、藪といえば藪医者、藪蛇など否定的、逆効果な表現にも用いられますが、仁徳天皇陵の「藪」から感じた「荘厳さ」を盾に、森の主な構成樹を広葉樹とすることを人に説き伏せたエピソードも見事です。

果たして現在の新国立競技場建設に携わっている「人」の志は100年後どう伝えられていくでしょう。当時の都民の無関心さや都市空間のデザイン力のなさから都市を破壊してしまったと伝えられることは一般に本意ではないと思います。槙さんの提言がなかったら、そうなっていたと考えると情けなく思います。
改めて広報を見てみると「FOR ALL」「「いちばん」をつくろう!」というコンセプトが新国立競技場建設には掲げられており、それは施設要件8万人収容という数となって跳ね返ってきていますが、数がどれだけ増えても決してALLとは成り得ず、数や規模の一番はすぐに二番三番になるものですから、コンセプトは実の伴わぬポスターデザイン上のものとなっています。
昨日、デザイン案を日本スポーツ振興センターは8万という収容人数は変えずに規模25%縮小して約22haとする方向を発表しましたが、規模、建設費等建物単体としてのみ判断するのではなく、明治神宮外苑の、すなわち明治神宮の一部としてどうあるべきかという視点で、「新しい何か」を求めるならばそれは何であるべきか、不毛なスローガンで民意を踊らさずに、建設に携わる有識者の方には真剣に取り組んで見出して頂きたいと思います。調和を維持する技術に、新しい何かを見出すことも出来るのではないでしょうか。

私個人は、8万人が同じ場所に集まるということにゾッとします。

新国立競技場

chou23 at 22:13│Comments(0)TrackBack(0)book 

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